2022.07.31 山食パンと角食パン

2022.07.31
製パンの記録

手作りパンが好きだ。

家では食パンを焼いている。

今までストレート法で作っていたのだが、今回から中種法で作ることにした。

今年の2月に出産をしたことがその理由だ。

産後はまとまった時間が取れない。
体に痛みが残っているから長時間の立ち仕事が辛い。
作業を分割したいのだ。
そうしてたどり着いた方法が冷蔵発酵を取り入れた中種法である。


プロから見ると「自分勝手にレシピをいじって失敗する素人」の典型だとは思うのだが、まずはやってみないと始まらない。
配合は以下の通り。

山食レシピ

中種)
強力粉 70%
インスタントドライイースト 0.8%
吸水 38.5%(中種の粉に対して55%)

本ごね)
強力粉 20%
全粒粉 10%
砂糖 5%
塩 1.5%
スキムミルク 2%
バター 8%
吸水 39.5%

角食レシピ

中種)
強力粉 70%
インスタントドライイースト 0.8%
吸水 38.5%(中種の粉に対して55%)

本ごね)
強力粉 20%
全粒粉 10%
砂糖 8%
塩 1.5%
スキムミルク 4%
バター 6%
吸水 33.5%

 

もともとの配合はのパン酵母は生イーストで2%だった。
私が使っているのはインスタントドライイーストなので、0.4を掛けている。

両方とも中種は冷蔵庫(5℃)で18時間くらい発酵させた。
本ごねからはストレート法と同じ工程で焼く。
計量は中種を作る日に済ませているので、その点当日は楽だった。

70%中種法
この頃は制作記録をつける気力もなかったため、写真はこれしかない。
カット後の断面写真も撮ればよかった。

ひとまずきれいに焼けてはいるものの、全体的に焼き色が薄い。
ミキシングの時に温度が上がりすぎてしまった。
捏ね上げ温度30℃超だ。

フロアタイムの発酵の進みが早い。
それなのに、ストレート法のときよりもホイロに時間がかかってしまった。
すでにイーストの力を使い切っていたのだろう。
パン生地には悪いことをした。

食べてみると、うっすらと酸味がある。
過発酵気味だ。

だが、過発酵にしては窯伸びしてくれたので良しとする。
家族は気づかない程度なので、トーストして朝食に出す分には問題はない。
ジャムを塗ってしまえば美味しいのだから!

次回はイーストはもう少し減らしても良さそうだ。
もう少し、ではなく、もっと減らすべきなのだろうか。

イーストからインスタントドライイーストへのの換算は、「×0.4」「×0.35」「×1/3」など色々な方法がある。
次回は今よりも少なくなる計算方法を採用したい。
発酵時間も長いため、そこからさらに減らしても良いのかもしれない。
実験が必要だ。

素人が焼く「おうちパン』の楽しみは、自由に実験ができる点につきる。
失敗しても食べればよいのだ。
食べられないくらいのものは、パン粉にすれば解決だ。

とりあえずたくさん焼けたので、冷凍してしばらくは食いつなげる。

 

 

 

アガサ・クリスティーの作品が好き

eyecatch

推理小説が好きだ。
今年そのことに気がついた。

今まではあまり読まなかったジャンルだった。
なんとなく、疲れてしまうのではないかという偏見を持っていたのだ。
しかし実際は全く逆で、とても読みやすいものだった。

推理小説の主人公は、事件の当事者である場合と、事件とは直接関係のない外部の人間の場合がある。
私が好きなのは後者のタイプだ。
たとえばアガサ・クリスティー作品ならば、名探偵ポアロミス・マープルが該当する。

当事者たちの人間関係がどんなに入り組んでいようとも、探偵する主人公にとっては他人である。基本的には蚊帳の外だ。
小説で描かれる感情の動きは共感や感動を与えるためのものではなく、ただの「情報」だ。
衝撃的な事件が次々に起きようとも主人公にとっては他人事であり、物語は淡々と続いていく。
そして最終的にはどんなに複雑な出来事であっても(多少無理矢理にでも)辻褄が合う。

驚きがありつつも、物語は定型的に展開される。
それが読んでいて心地よい。

今はアガサ・クリスティーの本を集めている。
好きだと言うには有名過ぎて少し気恥ずかしいのだが、彼女の作品にはお金を払うだけの魅力がある。

クリスティー作品には料理やお菓子、服装についての記述が頻繁に登場する。
事件を他人事として楽しみながら、古い英国の文化を垣間見られることが楽しい。
文学的地位の盤石な作家なので、本が絶版になる可能性がほとんどない点もありがたい。
作品数が多くとも慌てずに収集できる。

今年は「好きな本」と「好きな作家」を見つけるという幸運に恵まれた。

少しずつ本棚を埋めていく未読の本を見ると、なんだか嬉しい気持ちになる。

 

 

 

手帳についての挫折と憧れ

 

来年の手帳を買った。

明るい黄色の表紙には木々と動物が描かれている。
大きいサイズのA5版で、書きやすくて読みやすそうだ。

手帳という存在が好きだ。
使うことに憧れがある。
手書きという行為が好きだし、自分が書く文字の形も嫌いではない。

それなのに、手帳をつける習慣はいつも続かない。
使い始めは張り切って書いているのだが、数ヶ月すると開かなくなるのが常だった。

記入することを負担に感じるわけではない。
事実を書いているはずなのに、自分が描いた文字を見ると、ソワソワと落ち着かないような不快な感覚に襲われるのだ。

結局ここ数年はスマートフォンでスケジュール管理をする方法に落ち着いていた。

今年の4月、性懲りも無くまた手帳に手を出した。
半年が経ち10月になった今、不思議なことに自分の文字が目に入っても以前より不快ではない。
読み返すことはまだ苦手だが、嫌悪感は薄らいでいる。
この分ならば来年も続けられそうだ。

今年、何が変わったのだろうか。
自分の意識を変えるほどの明確な出来事は無い。
安定していたともいえる。

振り返ってみれば、ここ10年は生活が不安定に動いていた。
心まで不安定にならないように、意図的に自分の感情から目を逸らしてきたように思う。
その結果が、ペラペラでスカスカの、何の情報も乗せられていない気持ちの悪い筆跡だった。

今年の春を過ぎてから徐々にではあるが自分の心と向き合えるようになってきた。

肉筆に、やっと肉が伴ってきた。

来年は、もっと自分の気持ちを直視できるようになるだろうか。
そうしたら自分の手書きの文字も、もっと受け入れられるだろうか。

素敵な手帳は手に入れた。
あと欲しいものは万年筆だ。

道具が、前を向くための力をくれる。

 

 

 

 

オーブンの思い出と今

eyecatch

 

今年に入ってから、パンを買う頻度が減った。
気に入っているベーカリーが改装のために休店したのだ。

それならばと、自分で作るようになった。
月に数回、食パン、バゲット、ベーグルなどの食事パンを焼いている。

いままでの人生の中でも、パンを焼く季節が何度かあった。

一番古い記憶は、「オーブン機能付き電子レンジ」が初めて我が家に来たときのことだ。説明書には『パン(バターロール)』という項目があった。

家でパンが作れるのかと、幼い私は驚愕した。

私と姉と母の三人で期待しながら作ってみたが、出来上がったのはパサパサしている苦い小麦粉の塊だった。

変な味だと笑い合う二人を背にして、私はひそかに感動していた。
美味しくないかもしれないけれど、たしかにパンが焼けたのだ。

台所を自由に使えるほどに成長すると、私は一人でオーブンを使い始めた。
まずは焼き菓子。それからパン。

学生時代は上手く焼ければ無邪気に喜び、友人たちに配っていた。
美味しいものを作りたくてレシピブックを買い漁った。

やがて社会人となり、心が潰される日々が続く。
寝ると明日がきてしまうから眠ることが怖かった。
重い心と体を引きずり深夜にパンやお菓子を焼いた。
暗く静かな家の中で、台所にだけ灯りをつけて。

細心の注意を払って生地を作っても、オーブンに入れてしまえば後はもう出来ることは何もない。

ただひたすらに焼き上がりを待つ無力な時間。

無力な自分が許されているようで、不思議な安堵感があった。
深夜の孤独な焼き時間は、自分を回復するためのとても大切な時間だった。

しかし焼き上がったものには関心が持てなかった。

パンやお菓子はただの処理すべき副産物だ。

いま、贔屓にしているベーカリーの改装は終わった。
有名店ということもあり平日でも長い行列ができている。

そのベーカリーは今でも変わらず大好きだ。
大好きだけれど、改装後はまだ一度も訪れていない。

私の中にまたパンを焼く季節がきた。
今度は自分のためだけでなく、家族のために作っている。

また再び無力な時間を味わいながら、今度は副産物にも愛を注ぐのだ。

 

 

 

朝の過ごし方

 

早朝の時間は勉強に充てている。
英語の勉強だ。

 

以前からずっと学び直したいと思っていた。

 

海外旅行に行く予定はない。
英語で会話をしたいわけでもない。

 

イギリスの作家アガサ・クリスティーの作品を、できるだけ直接的に味わってみたいのだ。

 

目標は、クリスティーの小説を原文で読めるようになること。
映像化されているものを字幕無しで聞き取れるようになること。

 

大人になって何十年と経つが、英語は学生時代に学んだきりだ。知識などはほぼ消えている。
教師がいたら、級友がいたら、きっと萎縮してしまっただろう。

 

だがこの場には自分1人だ。

 

「中学英語」と書かれたテキストを堂々と開き、行きつ戻りつ飲み込めるまでペンを動かす。

 

ゴールはいつになるのだろうか。
その時私は何歳だろうか。

 

果てしなく遠い目標だけれど、千里の道への一歩目を踏み出せたことが今は素直に嬉しい。

 

とりあえず、明日もまた早起きをする十分な理由になる。

 

 

 

早朝

見出し画像

午前4時。外はまだ暗い。

自分がこんなに早起きの人になるとは思わなかった。

 

腕時計のアラームは午前3時30分にセットされている。

目覚ましの音は無し。バイブレーションのみ。
こうすれば、時計が私の腕をトントン叩いてひっそりと起こしてくれる。

 

同居家族は夫、長女、長男、次女。
皆おなじ部屋で寝ている。
次女はまだ生後5ヶ月。
泣いたら授乳をしなければならないから、次女だけは私と共に寝室から連れ出している。

 

この早起きは完全に自分のためだ。
家事なんて絶対にしない。

 

どうしても、1人になれる時間が欲しかった。

 

夜はだめだ。
幾度となく静かな夜を目指したけれど、私が寝ないと子らが起き出し、その静けさを破壊する。

 

朝ならば。

朝にこっそり起き出せば、きっと自分だけの時間が確保できる。

 

ずっと欲しかった静かな時間。
自分だけのための時間。

 

起きられるかはわからないが、アラームを早朝にセットした。

そしてそのまま、日の出より少し前に起きることが習慣になった。