手帳についての挫折と憧れ

 

来年の手帳を買った。

明るい黄色の表紙には木々と動物が描かれている。
大きいサイズのA5版で、書きやすくて読みやすそうだ。

手帳という存在が好きだ。
使うことに憧れがある。
手書きという行為が好きだし、自分が書く文字の形も嫌いではない。

それなのに、手帳をつける習慣はいつも続かない。
使い始めは張り切って書いているのだが、数ヶ月すると開かなくなるのが常だった。

記入することを負担に感じるわけではない。
事実を書いているはずなのに、自分が描いた文字を見ると、ソワソワと落ち着かないような不快な感覚に襲われるのだ。

結局ここ数年はスマートフォンでスケジュール管理をする方法に落ち着いていた。

今年の4月、性懲りも無くまた手帳に手を出した。
半年が経ち10月になった今、不思議なことに自分の文字が目に入っても以前より不快ではない。
読み返すことはまだ苦手だが、嫌悪感は薄らいでいる。
この分ならば来年も続けられそうだ。

今年、何が変わったのだろうか。
自分の意識を変えるほどの明確な出来事は無い。
安定していたともいえる。

振り返ってみれば、ここ10年は生活が不安定に動いていた。
心まで不安定にならないように、意図的に自分の感情から目を逸らしてきたように思う。
その結果が、ペラペラでスカスカの、何の情報も乗せられていない気持ちの悪い筆跡だった。

今年の春を過ぎてから徐々にではあるが自分の心と向き合えるようになってきた。

肉筆に、やっと肉が伴ってきた。

来年は、もっと自分の気持ちを直視できるようになるだろうか。
そうしたら自分の手書きの文字も、もっと受け入れられるだろうか。

素敵な手帳は手に入れた。
あと欲しいものは万年筆だ。

道具が、前を向くための力をくれる。